今今と

今今と 今という間に 今ぞ無く
今という間に 今ぞ過ぎ行く

NHK教育「にほんごであそぼ」という番組の中に、
浄瑠璃風にいろいろな小説や詩の一説を「謡う」
コーナーがあるのだが、
(くるっと回る「床」(ゆか:太夫が浄瑠璃を歌う場所)を設けて、
太棹の伴奏を従えて、裃を着け、浄瑠璃の詞章風の抑揚で謡う)

今朝そのコーナーで謡われたのが上記の短歌。
教訓的なメッセージを含む「道歌」というジャンルの
一首であるらしい。

有名なものとしては

なせばなる なさねばならぬ なにごとも
ならぬはひとの なさぬなりけり

ってのが道歌だ。

(いろんな人がいるもので、
好きなひとが道歌を集めてた)

それにしても「今今と」の道歌、

今やります今やりますと言っているうちに
時は過ぎてしまうよ、と解釈すれば確かに
教訓的な歌だが、

むしろ、とらえようとした瞬間に
するするとどこまでも逃れていく
「現在」の目眩のするような
ありようを詠じたもの、と感じられて
朝っぱらから、ぞお〜っとした。

時間って「持続(ベルグソン)」ってより、瞬間だよね
って『瞬間の直感』で言った
バシュラールに聴かせてやりたいと思ったほどだ。

実際、過去も未来も仮構であって、
我々にとって「存在するもの」は
「今という間に」移ろいゆく
「今」しかないのである。

だからこそ、その仮構がふとはずれるとき
私たちは永遠に接続してしまう。

日日雑記

Posted by Takuro