蝉のお弔い

「おとーさん、セミが死んでる!」
とロクスケが報告しに来たので、

なにっ、どれどれ、と見に行くと
大きなセミが足を上に向けてひっくり返って
行きだおれている。

ロクスケによく見せてやろうとつかみ上げると

ジジジジジジ・・・・

ぅわぁ!!

これが世に名高い
セミ爆弾(byハチクロ)である。

あー、びっくしたねー

ロクスケはまたジジジってなるから
やめてくれというのだけど、
顔が見たいのでそっとひっくり返す

碁石みたいなつや消しの深い黒に
白い斑がはいっている

力強くもこもこと隆起した
その造形は仏像を思い起こさせた

日常の空間にパカッと切れ目ができて
現形したような彼岸の造形に
ずっと見入ってしまう

そこへ、みぃこがやってきて

「セミ描いとこ」

ゴシゴシ しゅっしゅっ
グリグリ さっさっ

「日に当たって柔らかくなって
クレヨン気持ちいー オイルパステルみたいー」

真っ白い画用紙に
黒い甲冑にくるまれていた
カラフルな生命が
ぐりぐりと写し取られる

死んだ人はみんな言葉になるのだ。
(寺山修司)

 

日日雑記

Posted by Takuro